農地を建物の敷地として使用する事で合意し、相当の期間に渡り賃借してきたが、この度土地が売却できそうである事、賃借人が廃業する予定である事から賃貸借契約を解除する事で合意した。なお、これまで賃料の不払いはなく、宅地へ転換するための整地等の費用は、賃借人が負担している。
その際、問題となるのは、現状が宅地であり、本件の賃貸借契約が成立する前の状態(=農地)に比べ土地の経済価値が上がっており、この経済価値の増加に対しては、賃借人にも一定の寄与が認められる事です。合意解除の場合において、立退料として一般的に考えられるのは、この賃借人の土地の価値の増加に対する寄与分であり、今回の件でもこれを無視する事は出来ないと考えられます。民法の考え方でも、例えば農地の状態で借地し、借地人が自らの費用で造成し、駐車場として使用した後、その状態で返還する場合、造成により経済価値が増加した分については、貸主は、借主の負担により、もとの状態に比べ利得を得た事になるため、これを不当利得として返還しなければなりません。
今回、仮に返還された土地を販売するとすれば、宅地としての価格で販売出来るわけですが、宅地に転換するための費用を賃借人が負担し、かつその後宅地として使用してきたにもかかわらず、この利益が現貸主に全て帰属すると考える事は不合理ですから、この理屈はおわかり頂けると思います。
それでは、賃借人の貢献度をいかほどと考えるべきかですが、単純に貢献度を2分の1ずつとすると、賃借人が負担した整地費用等の半額程度を負担するのが公平ではないでしょうか。本来ならば、経済価値の増分の半額程度というのが理論的ですが、相当の年月が経過し、賃貸借契約始期当時の価格を把握する事が困難ですので、農地を宅地にするにあたり必要とされた費用、これを全て賃借人が負担しているため、貸主が一方的に増価分を受領する事のないよう、その半額をお支払いするかたちで協議されてはいかがでしょうか。賃借人としては「全部負担して一銭も戻らないのはおかしい」と言う考え持っておられるのではないでしょうか。特に、これまで貸主が受領してきた地代が宅地の地代として適正な水準で、宅地としての対価を十分に享受してきたとするならば、半分程度の貢献は認めるべきではないかと思います。
以下、地中障害が発見された事案に関する判例を紹介します。
公園事業用地の代替地に、地上11階建の看護士寮を建設する際に発見された地下構造物の除去に付き多額の費用を要したため、損害賠償を求めた事案について、判例は、地中埋設物が存在する土地は、高層建物が建築される可能性のある土地として通常有すべき性状を備えないものとして「瑕疵」にあたり、埋設物は容易に認識し得る状況になかったとして「隠れた瑕疵」として認めています。
また、マンション建設目的で購入した土地の地中に従前建物の地下室を伴う基礎が存在する事が判明した事案では、瑕疵担保責任免除の特約があるものの、売買契約に際しての地中障害に関する合意は、木造建物の布基礎程度のものは買主の負担とするが、それを超える地中障害については売主の負担とする趣旨であったとものと認定し、結果として瑕疵担保責任免除の特約を認めず、買主の請求を認容しています。
これは仮に、いかなる地中障害があろうとも買主の負担としたのであれば、地中障害の撤去に多額の費用がかかる危険があるので、買主が売買契約を締結する前に、従前建物の基礎についてなんらかの調査をしたはずであり、従前建物の基礎は、布基礎のようなもので撤去に多額の費用は要しないと売主、買主とも想定していたが故に買主が撤去費用を負担する旨の合意がなされたと解したためです。
またこの場合、売主の責任は、瑕疵担保責任による損害賠償責任となるが、地中障害の撤去に要する費用は、買主負担の場合にはその分が控除されて売買代金が定められるものである事から、損害賠償の範囲は、地中障害の撤去費用としています。なお、撤去に伴うマンション建設の遅延による売買代金の運用損と借入金利息の追加支払い分については、地中障害の撤去に要する費用を考慮して売買代金を決める場合には、建設が遅れる事も考慮されている事、資金の借入や販売時期の決定は、大規模な地中障害の有無を調査してから行う事も出来るので、大規模な地中障害が発生したからといって必ず借入金利息を支払う必要があるとは限らない事、を理由として認めていません。
以上、土地の売買契約に際して残置物等の地中障害が発見された場合には、売主に瑕疵担保責任が発生し、少なくとも、この地中障害の除去費用に付き、損害額として買主に賠償しなければならず、瑕疵担保責任免除の特約についても一定の限度でしか認めないというのが判例の立場です。