一画地を建物と同一使用目的に供されている画地を残地ととらえ、原則隣接空地については考慮しない。
例外的に隣接地を移転先と認定するにあたっては、すぐに使用出来る宅地の空地であり、現況農地は対象としない。残地が移転先として通常妥当な面積であっても、残地を通常妥当な移転先と考えない地域※1においては、残地が通常妥当な面積であっても、機能的検討において、地域の実態における利用環境面を考慮し、残地を合理的な移転先と認定しない。
その地域の特性を十分調査し、その地域の通常妥当な宅地の植栽、自動車の保管場所、利用環境面等の判断基準を持って、敷地の機能的検討をおこなう。
特に地域の範囲を特定するものではない。その範囲が、1ブロックであるのか、1街路であるのか、字単位なのか、町単位なのかは大部分の人が通常妥当であると認定される採用理由に基づき解釈する事であり、あらかじめ設定するものではない。
※1:残地を通常妥当な移転先と考えない地域…地理的特性、地域事情
曳家・改造・構内再築のいずれの工法においても、まず第一義的に利用環境面を考慮する事が求められており、その上で以下の検討を進める事となる。
残地内での移転工法の検討は、移転対象建物が複数の用途に供されている場合には、各用途毎に検討される。また移転対象建物が複数棟の場合には、各建物毎に検討される。
その結果、
など複合的な工法を採用する事もある。
上記3つの検討の末、原則経済比較の検討を行う。経済比較を省く事が出来るケースとは、利用環境上、移転工法が限定される場合、または明らかに補償額が高額となる場合を指す。
経済比較する補償額総額の中は、建物移転料と通損補償を含んでおり、通損補償額の中は営業補償も含む。また当然工作物移転料立木補償も含むと考えた方がベターであろう。
改正前の曳家工法は、「建物を残地に曳家する事が出来ると認められる時は曳家工法による」と規定されていたため、物理的な面に重点を置き、曳家工法を認定してきたケースがあったが、今回の改正により
といった条件が提示され、残地への移転は、植栽、自動車保管場所、その他の利用環境の面を考慮する事が明確化され、曳家工法の認定においても他の移転工法と同列に、合理的と認められる場合に採用される工法となった。曳家工法の原則を見直し、再築工法、曳家工法、改造工法等の中から合理的と認められる工法を採用する事となった。
したがって、従来業務と同様な手続きを踏んだうえで、上記の要件で合理性が見い出せない場合、または経済的合理性がない場合に曳家工法を否定する事になる。逆に、残地において従前の利用環境が充分に確保される状況で経済的合理性が認められれば、曳家工法を採用する事となる。
なお、住宅の曳家を検討する場合に、回転を伴う曳家については日照条件等の変化を伴うため、従前の利用環境が損なわれるものとして、曳家工法を否定する事がベターであろう。
移転対象建物(住宅)を残地内において再配置するに可能な面積は存在するものの、残地形状から見て、対象建物を残地に配置するためには回転を伴わざるを得ず、それにより居室(和室)の日照条件が悪化する。さらに、敷地面積の減少により、庭園、駐車スペース等の確保が困難となり、従前利用環境が大きく制限される。以上の課題を総合的に検討判断するに、曳家工法は合理的な工法とは認められない。また、建物に使用されている部材に希少性は認められず、同種同等の材料を持って、改造工法あるいは再築工法により、従前建物の価値を損なわずに建物の移転を図る事が可能であると認められる。
建築基準法等の法令により既存の建築物等が当該法令に適合しない時は、建築物の所有者に改善の義務が生じる。規制の内容によって一定期間猶予される場合もあるが、公共事業の施工に伴い建物を移転する場合に移転先地に建物等を建築する時は猶予規定が適用されないため、法令に合致した建物を建築する事となる。こうした法令改善費については、財産権に内在する負担として通常受認すべきものであるとして補償しない。補償すれば移転物件の価値の増加をもたらし、その者に不当な利益を与える。
ただし、法令の規定に基づき改善の時期が明らかである場合を除いて、原則として既設の施設の耐用年数満了時以前に施設の改善を行う事となった時は、法令改善費の運用益損失額の補償を行うものとする。なお、移転工法検討においては法令改善を考慮する。
買収される事により不適格建物となる建物で、建ぺい率・容積率が不適格となるものについては補償しない。土地の利用規制に係わるものについても補償しない。
物件が他の法令に違反する場合にそれをどのように処理すべきかという事は、当該法令に関する問題であって収用法第77条(移転料の補償)の直接の問題ではなく、当該法令を適用すれば生ずるであろう事態を根拠として移転料の補償を否認する事を合理的な根拠を持つものと認める事は出来ない。なお、他の法令に違反している物件に対してその移転料の補償を否認するような明文も収用法上にはない。
また、他の法令に違反している物件の場合においても、物件所有者は国法上所有権その他の財産権の成立が認められている。こうした事から、法令違反の物件に対しても移転料を補償してこれを移転させなければならないものと解し、他の法令により除却すべき事由を持って建物を再現する必要がないと認める事も出来ない。
また、土地を不法占有している者が建物等を設置している場合、当該建物が財産的価値を有している時は、たとえ不法占有者であっても当該建物の正当な権利者であり、それをどのように処理すべきかは当該法令に係わる問題であって、起業者は完全なる移転補償を行うべきであるとの見解により、不法占有者に対する移転補償の取扱いは一般的には用対連基準第28条に規定する「建物等の移転料」を補償する事によって不法占有者に移転義務を課している。
また、建物等の移転に伴い営業上の損失を生じた場合には、前記のように建物移転料の補償の必要があるという結論を得れば何も建物移転料と営業補償等の通常生ずる損失の補償とを区別して考えるだけの特別な理由は存在せず、建物移転料以外の通常生ずる損失も補償を行う必要はある。
土地の一部収用による道路や地下道の建設の結果、残地に現存するガソリンスタンドの隔離距離の保持が出来なくなり、残地の他の部分に移転せざるを得ないような事例では、移設費用自体についての補償もなされるべきであろう。危険物の規制に関する政令9条による隔離距離保持義務を自らの敷地内で確保したにもかかわらず、その敷地が収用され、一旦は確保した隔離距離に公の側から侵入してきたため移転せざるを得なくなった場合には、それは建物の構内移転と基本的には同じと言える。

| ※1:運用益損失額算定式 ※2:残耐用年数20年、年利率5.5%の場合の複利前価率 |
|
| A+B | =従前建物の推建費×再築補償率+(照応建物の推建費と既設建物の推建費の差額の運用益損失額※1) |
| =1,000×80%+(1,200-1,000)×(1-0.3427※2) | |
| =800+200×0.6573 | |
| =931(補償額) |

従前の機能を確保するために必要最低限の階数、面積、設備等の増加とする。原則的に構造材の変更は行わない。例外として付近建物の状況にならって行う事とする。
照応する建物においての使用材料は、従前建物と同種同等のものである。また例外的な問題として、2階建を3階建にするために構造材の変更が認められた場合には、各工種別に等価と思われる使用材料で持って設計する。
高齢者や障害者が在宅する平家建の住宅の残地内工法において照応する建物を検討する際、2階建でエレベーターの設置を考える時、機能的増加および従前建物を超える価値増となる恐れがあり、残地内工法の採用自体に問題があるとするべきである。

| A+B | =従前建物の推建費×再築補償率+(照応する建物の推建費-従前建物の推建費) |
|---|---|
| =1,000×80%+1,200-1,000 | |
| =800+200 | |
| =1,000(補償額) |

| A | =従前建物の推建費×再築補償率 |
|---|---|
| =1,000×80% | |
| =800(補償額) |

| ※1:運用益損失額算定式 ※2:残耐用年数20年、年利率5.5%の場合の複利前価率 |
|
| A+B | =従前建物の推建費×現価率+(照応する建物の推建費と従前建物の現在価額の差額の運用益損失額※1) |
| =1,000×60%+(700-600)×(1-0.3427※2) | |
| =600+100×0.6573 | |
| ≒665(補償額) |

| A | =従前建物の推建費×現価率 |
|---|---|
| =1,000×60% | |
| =600(補償額) |
| ア. | 照応建物の推建費 | > | 従前建物の推建費 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| イ. | 従前建物の推建費 | ≧ | 照応建物の推建費 | ≧ | 従前建物の再築費 |
| ウ. | 従前建物の再築費 | > | 照応建物の推建費 | > | 従前建物の現在価値 |
| エ. | 従前建物の現在価値 | ≧ | 照応建物の推建費 |
※法令改善費の運用益損失額と発生材については考慮する
※年利率が下がれば、運用益損失額も下がる
両者の比較の際には、残地内工法では残地補償と残地工事費補償を含め、構外再築工法では残地価額を含めた補償総額の比較により、経済的合理性を判断して決定する。なお、残地補償と残地工事費を加えた額が残地価額を超える時には、残地価額を上限とする。
これは移転先の決定であって補償額の決定ではない。第9条但書の適用の判断を必要とする場合や構外工法の場合の残地価額は、そのまま補償額とはならない場合があるので注意。
構内工法の限度額が、残地補償を除く構外移転の総費用に残地の価格を加えた額とされた事に伴い、地価水準の高い地域においては補償の歯止めとはならない。一方、地価水準の低い地域においては構内工法の認定が困難となるとの事情から、
がされている。
用地の取得により残地、残存する物件等に関して価格の低下、利用価値の減少等の損失が生じた時にこれらの損失額を補償するもの。その補償額の算定式は、以下のとおりとなる。
{取得に係わる当該画地の評価格-当該残地の評価格×(1-売却損率※)}×当該残地の面積
| 標準地と残地の格差 必要と成る早急性の程度 |
5%未満 | 5%以上 10%未満 |
10%以上 20%未満 |
20%以上 |
|---|---|---|---|---|
| 高い(建付地) | 10 | 20 | 25 | 30 |
| 普通(予定地) | 5 | 15 | 20 | 25 |
| 低い(資材置場農地) | 0 | 5 | 10 | 20 |
残地に借地権が設定されている場合の、残借地権等に冠する損失の補償額の算定式は、以下のとおりとなる。
| {消滅させる借地権等に係わる当該画地の借地権等の評価格-当該残借地権等の評価格×(1-売却損率)} |
|---|
| ×当該残借地権等に係わる面積 |
借地権が設定されていれば、原則、所有者と借地権者において配分する。
残地等に関して、通路、溝、かき、さくその他の工作物の新築・改築・増築もしくは修繕又は盛土もしくは切土をする必要が生ずる時は、これを補償する。
前項の工事に伴い、建物その他の工作物の移転、嵩上げ、立木の伐採・移植が生じた場合には、これを補償出来る。
以下の全てに該当する場合
残地取得の要件は、土地所有者が従前の用に供する事が出来ず、かつ利用上の制限から処分も出来ない残地とする。処分可能な残地の場合は、その対価を事業用地に係わる補償と合わせて生活再建を図るので、取得の必要が生じない。
以下のいずれかに該当する場合
「借家人が附加した造作又は増築部分であって、建物の本体および構成部分として建物に附合するものに係る移転料は、建物所有者に補償するものとする。」として原則、建物所有者と契約を行うものとする。
ただし、建物所有者と借家人の間で同意されたものに対する補償金は、借家人に委託払い出来る。この事を頭に入れて調査時点でどのような聞き取りを行い、調書をどのようにまとめるかについて、あらかじめ起業者との打ち合わせを行っておく必要がある。
移転先は構外となり、総合比較で構外再築を認定した場合の残地に対する補償は残地補償のみ行うものとする。この場合は、移転先において機能回復は図られる事となり、残地の利用環境を考慮する意味が消失するからである。