建設工事に伴い発生する騒音・振動等により、養鰻経営者が育成する鰻に与える影響を調査し、その因果関係を分析するとともに、被害額を算定したものである。当該工事のうち、対象の養鰻場に影響を及ぼす恐れのある作業としては、
があげられる。
予測される事業損失は、工事の工期等から考慮すると、
等が考えられる。

鰻の感覚のうちで最も発達しているのは嗅覚である。この嗅覚は極めて敏感であるが、視覚は遠方を見るに適さず、いわゆる近眼であるとされている。音を感ずる器官は、体側にある側線器官である。この器官も極めて敏感でゴム靴のカカトの音でも感ずるといわれている。
したがって、鰻が餌を摂る時は、まず嗅覚によって餌の方向を感知し、接近した後視覚で認知する。
鰻は特に硬いものと硬いものとか当たる衝撃音が嫌いで、給餌中であっても衝撃音の発生によって散逸してしまう事が観察されている。
育成期間中の鰻は、それまでの育成過程の中で大きさ等にばらつきがあり、出荷は以後6ヵ月程度に至るまで逐次出荷されるものである。
これら育成期間中の鰻に対して衝撃的な振動や騒音のストレスを与える事は、神経質でデリケートな生態特性を有する鰻にとって餌喰いの低下にしたがって、増肉が得られない事、ストレスによる呼吸数および酸素消費量の増大、それが原因となって種々の病気の発生、大量の斃死を招く危険性を有する。
工事着工以降、餌喰いの低下、死鰻の発生がみられるが、工事による振動・騒音は以後激化していく事となるもので、営業の継続は困難となるものと考えられた。
通常の営業形態通りシラスを導入したとすれば、当該事業により発生する振動騒音をシラスの時期およびビリから養中に成長する間、継続的に受ける事となる。
シラスの時期は、鰻の体質や性質を形勢する大切な時点であり、この時期にひ弱で軟弱な体質とする事は養鰻経営にとって多大な損失となる事は明らかである。
養鰻経営にとってシラスの導入および管理は、水・餌はもとよりその環境づくりに最も神経を使う時期である。育成期間中の在鰻にあっても、餌喰の低下、へい死の発生がみられる事から、通常通りのシラスを入荷したとすれば、振動や騒音のストレスをさらに影響を受けやすいシラスを飼育する事は困難であると考えられた。