区分建物

はじめに

マンションとは、主に大都市において各住戸が主として分譲方式によって供給される中高層の鉄筋コンクリート造共同住宅の俗称であって明確な定義はなく、マンションという名前が使用されだした昭和40年代では、高級豪邸という意味があったが、近年では賃貸共同住宅においてもマンションという名が一般化している。

地価高騰に対応する土地の高度利用、都市圏域の膨張に対応する職住近接等の要求を満たす住宅とし、主として民間企業による住宅供給の一形態として急速に普及し、都市部における一戸建住宅の取得が困難となった現在では、分譲マンションはまさに都市部住宅として定着したものとなっている。

マンションの住戸面積は40~140m²と種々で、平均面積は65m²、全体では50~70m²が7割を占めいている。

分譲マンションは共同住宅でありながら、各住戸が区分所有される持家であり、基本的には区分所有者がその管理責任を共同で持ち、管理運営にあたる宿命を負っているが、ひとつのマンションで住戸面積や住戸タイプの差が大きいと、さまざまな家族構成、経済力の居住者が住む事になるため、管理等に対する要求も異なり、マンションの管理運営は非常に難しいものとなっている。

制定昭和37年、改正昭和58年、昭和63年の「建物の区分所有等に関する法律」(マンション法)は、まさに時代の要請に応え、こうした問題を整理する意味からも制定されたものと言える。

切取補償検討

各区分所有建物全体としての、一棟建物を単位として考えた場合の補償方法は、

損失補償基準第28条、同細則第15移転料補償

  • 曳家工法
  • 改造工法
  • 除却工法(建物の一部を切取)
  • 再築工法

の移転工法を検討する必要があり、またその検討結果の如何によっては、移転困難な場合の基準第28条の建物等の取得の補償が考えられます。

各移転工法とも有形的・機能的・法規的な観点および経済的な観点からの検討を行い、総合的な判断をする事は言うまでもありません。マンション1棟のうち、その一部が支障した場合、取得する土地の上にある建物の一部が当該建物に比較して僅かであり、かつ重要でなく従前の機能にほとんど影響がないと認められる時に除却工法の採用が可能となるものですが、マンションでは各戸の区分所有権は独立した権利であって、それぞれが重要部分ではあるものの、切り取り後の残存部分についても独立して機能し得る建物であります。

したがって、マンションの一部を切り取るとした補償方法(除却工法)は、否定する事の出来ない、移転工法としては最有力候補として、取り上げられるものとなります。

マンション切取補償(除却工法)採用にあたっての留意事項

構造的な問題

マンションを切り取るとした場合に、荷重等のバランス、構造上の影響がないか。

この点については対象マンションの建築当時の確認申請図書等を参考に、材料、規格、壁量、壁厚、配筋等について確認し、切り取り可能か否かを判断する。

新耐震設計法の問題

耐震設計に関し、昭和56年建築基準法施行令の一部が改正されている。

これは新潟地震(昭和39年)、十勝地震(昭和43年)等において、一部建築物にかなりの被害が発生した事から、昭和47年より建設省を中心として「新耐震設計法」の開発に着手して、昭和52年に「新耐震設計法(案)」を公表した。

その後昭和53年に発生した宮城県沖地震により、その設計法の妥当性が実証された事から、建築基準法施行令の一部改定となったものである。

したがって、マンション切り取り構造的検討を行う際、昭和56年以前に建設の建物については、新耐震設計に基づく建物でない事に留意する必要があります。

マンション管理の問題

分譲マンションの所有形態たる区分所有は、専用部分、共用部分の持分および敷地利用権からなり、敷地利用権は通常、所有権の共有または借地権の準共有であると考えられます。

専用部分と共有部分の持分は密接不可欠である事から、分離して処分する事は出来ない(建物の区分所有等に関する法律第15条第2項)と定められ、また敷地利用権が共有または準共有の時、専有部分と敷地利用権を分離して処分する事も出来ない(同法第22条第12項)と定められています。

すなわち、マンションは個々に付き個人の所有とはいえ、共同住宅者たる全員の財産であるとの性格が強く、法的にも自分勝手な行動を制約しております。それゆえ共同住宅であるマンションでは、マンションの経済管理費や修繕積立金を徴収して全区分所有者で構成する管理組合を設けマンションの管理および運営が義務づけられてはいますが、管理組合運営について足並みが揃わないのが実情です。

そのような中で、マンションの一部を切り取る事について、区分所有者全員からその所有権(マンション敷地、建物区分所有)を取得する事の困難性に留意する必要があります。

おわりに

区分所有建物の敷地の買収に関する補償先例については、事例の少なさとともに区分所有建物の独特な法的構成(単独所有と共有の混在・所有権の立体的積み上げ)からしていかなる補償方法を採用するにしても、種々の課題が発生するものと考えます。

補償先例としては、

月刊用地1984年4月号P8(甲子園マンション)

110戸のうち7戸切り取り

全所有者のうち買取希望者の区分建物を買取り

7戸を切り取りし、修復

マンション業者に転売

月刊用地1991年8月号P12(一般国道54号改築工事に伴う用地の取得について)

住戸34戸、店舗4戸

全所有者を対象に買収

建物解体は起業者

があるものの、マンション居住のままでの一部切取解体の事例は非常に少ないのではないかと思います。

しかしながら、分譲マンションが都市部での一般的住宅として定着した現在、公共用地の取得に伴いマンションに対する補償案件は避けられない状況にきているのではないかと思います。

今後ともマンション補償に関する資料収集に努め、その解決の糸口を模索していこうと考えています。