対象企業は、海に面したこの地に工場を設立した時に、工場用地として海面埋立地を取得すると共に専用岸壁の建設も行っていた。
この工場で製造し分解モジュール化した製品を、出荷先の組立施設まで運搬する船積の役割をしていた専用岸壁だが、公共事業である公有水面埋立によって使用が困難となり、対象企業は専用岸壁の機能を失う事になる。また、岸壁としての利用および効用もなくなり、無用の長物と化す事にもなる。
その結果、
が必要となり、不必要となる専用岸壁の維持管理費を差し引いても、経費負担増となる。
対象企業の専用岸壁の補償について、
を検討する。
すなわち護岸は、土地の構成部分であっても施設として把握するものではないので、補償対象とはならないと一般的には考えられている。
ただし対象企業の場合、海に面した部分が埋め立てられる事は、原材料搬入・製品出荷のための物流の幹線を失う事と等しくなり、搬出が困難になると、営業上著しい支障を来すものである。
公共用地の取得に伴う損失補償基準細則の基準第9条によれば、水面利用加算において、河川、運河又は海面に接し、荷上場、倉庫用地等の用に供する土地に関しての標準の加算率は、
の範囲で、水深及び護岸等の状況に応じて適正に定めるとある。公有水面埋立事業によってこの専用岸壁が利用出来なくなるとすると、工場敷地そのものの価値減が生ずると考えられる。
上記のような2面性を有しているが、土地の構成部分というよりも工場で製造された製品を船積みし出荷するための施設機能の方が大きいといえる。
土地を構成するための護岸機能については、土地を買収する場合には、その土地価格に含まれる。また買収しない場合には、損失は発生しないと考えられる。
製品を出荷するための施設機能については、専用岸壁は出荷施設として対象企業にとって重要な機能を有しており、工場の操業継続にも影響を及ぼすほどの施設といえる。
したがって、護岸としての機能は別として、製品を出荷するための施設としての機能に対しては、補償対象とすべきものと判断される。当該案件の場合、岸壁に利用価値を含んだ土地価格で買収する事よりも、岸壁の利用価値が薄れる事に着目すべきである。
また、土地価格だけに着眼点を置いた場合、同じ場所の土地で岸壁として利用価値があるケースと、それ以外のケースで価格差が生ずるならば、その利用による経済価値の減退相当分が補償対象となるべきである。
の補償が必要であるものと判断し、補償算定を行った。
すなわち対象の専用岸壁については、製品出荷機能として経済価値を有していた施設が、公有水面埋立事業によってその機能を喪失し経済価値を失ってしまうため、その対価を補償すべきだと考えた。
以上、公有水面埋立事業によって対象企業が、専用岸壁の経済価値喪失と共に、埋立工事期間中に発生する経費増と、事業完了後に発生する経費増について補償を要するものとし補償算定を行った。